365日のラブストーリー
2

 高層ビルの林立するビジネス街にある、商業ビルの高層階部分に都内屈指の高級ホテル、アマン東京がある。スーツ姿のビジネスマンとすれ違いながらエレベーターホールへ向かい、三十三階で降りたとたん、異空間が広がった。

(すごーい……)

 有紗は唖然としたまま立ち止まった。まさかビルの高層部分に、やわらかな光が降り注ぐ、五階分の吹き抜け天井が現れるとは思わない。

 巨大な生け花が中央に飾られたエントランスホールは近代建築と、日本の伝統文化、自然素材の調和がなんとも心地よく、ここが東京の中心であることを忘れてしまいそうになる。まるでオアシスのようだ。

 有紗は神長の横を歩きながら、そこにいる人々を見渡した。

 若い男女や老夫婦、年齢層は様々だが、高級ホテルだからといってブランド品で武装した客はどこにもいない。

本当の金持ちというのは背伸びをしてまで自分を良く見せる必要なんてないのかもしれない。観光用のカジュアルな服装でも、物腰には品があって美しく見えるのだ。
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