365日のラブストーリー
(神長さん……)

 千晃と買い物に行ったりして、中途半端な関係になる前に、もし神長と今のような関係になっていたら、悩むこともなかったのかもしれない。

けれども振り返れば、風邪を引いたのは千晃の家に行ったときに心暖からもらってきたからだ。それがなければ神長と出かけることもなかったのだ。

(どっちみち、神長さんがわたしを選ぶなんてない。今日は今日で割り切らなくちゃ)

 どう転んでも今の自分にはこの道しかなかったと、よく言い聞かせようとするのだが、膨らみ始めた神長への想いを振り切ろうとすると、それだけで涙が滲んできてしまう。

 もうすでに恋に落ちてしまっているのだ。締め付けられるような胸の痛みで、有紗はそれを自覚させられてしまった。
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