365日のラブストーリー
 これがRenの言っていた相性なのだろうか。
有紗は千晃に触れながら、神長の手のひらの感覚を懸命に思い出そうとしていた。

(今日は何してるんだろう。昨日買った重慶飯店の鳳梨酥はもう食べたかな)
 想像すると、自然と顔が綻んだ。

「どうした? なんかほんとうに変だよ」

 その横顔を見ていたのか、千晃の目が優しくなる。きっと千晃は今日こうやって三人で会えたことを嬉しく感じ、相手も同じ気持ちでいると信じているのだ。罪悪感がないといえば嘘になる。

 急になにかがふくらはぎのあたりを触れて、有紗は椅子の下を見た。どこから這ってきたのか、園児というにも幼すぎる男の子を見つけた。

「すみません」
 すぐに横から母親が姿を現して、男の子を抱き上げてあわただしく映像室の外に出て行く。

(もし心暖ちゃんがおとなしくできなくなったら、やっぱりわたしがああやって外に連れて行くのかな?)
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