365日のラブストーリー
 周りから心暖の母親に見えるのは間違いない。子連れマナーにも気を付けなければ、千晃まで白い目で見られてしまうだろう。

(恋愛経験だってないのに、いきなりお母さんになっちゃうのは怖いな)

 世の中にはそれでも上手くやっている人もいるだろう。けれどもそれが自分にできるとは思えなかった。

人として未熟で、頼りなくて、こんなに知らないことだらけでは、子どもに何かを教えることなんて出来るはずがない。自分の影響を受けて大きくなったら、きっととんでもない大人になってしまう。

(やっぱり、いろいろ不安があることは早く話した方がいいよね)
 なんとなく千晃に目を向けると、すぐに目が合った。

「有紗ちゃん、好きだよ」

 甘い言葉を囁かれてもなんと応えたら良いのかわからずに、有紗は黙り込んだ。これを言われたのが上映中でよかったとほっとしてしまった。
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