365日のラブストーリー
「心暖はお菓子好きだからすぐ覚えたよな」
 同類だな、と言いたげに千晃が視線を送ってきた。

 それから館内の展示物を見て回った。心暖から保育園で仲良くしている友達の話をいろいろと聞いたり、江戸時代の火消しの資料を見ながら千晃と一緒に感心する。

 昨日とは違った種類の楽しい時間だった。

 好奇心のままに動き回る心暖に手を引かれて歩いているうちに、子どもらしい無邪気さに心が和んでくる。映画を観ているときには、不安なことは早いうちに話をしないといけないと思ったのに、その気持ちも萎んでいく。

 言えば千晃を傷つける可能性もあるし、少しずつ違和感になれていけば、知らないうちに悩みもなくなっていくのかもしれない。そんな考えが心を占めていく。

 『他人の価値観に縛られて、無理をしないでくださいね』神長から言われたことが頭をよぎったが、誰かが以前『結婚は人生の修行だ』とも言っていた。
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