365日のラブストーリー
 他人と長く一緒にいようとすれば、どちらかが相手に合わせなければいけないことだってあるはずだ。細かな不安をいちいちぶつけていては、結婚や恋愛どころか、人間関係だって成り立たない。有紗は自分を納得させる。

「ありさちゃん、みてみて」
 ずらりと並んだ火消しのシンボル、纏(まとい)に興味を持ったようで、心愛が手を引いてきた。

「火消しって『め組』だけじゃないんだ。めって書かれた纏はやたら記憶にあるけど、他にもいろいろあるんだな。教科書で習ったっけ?」
 千晃が横に並んだ。

「たぶん。でもわたしも自信ないです」

 「さ」「も」「せ」「る」ひらがな一文字のものもあるが、漢字が書かれているものもある。形状もいろいろで、心暖にはそれも面白いようだ。端から纏を指してはひらがなを読み上げている。

「普段の生活に近いものをよく知るってのも、結構おもしろいよな」
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