365日のラブストーリー
「そうですよね。大人になるうちに忘れて来ちゃったことを、もう一度思い出したりとかして」

「まあそれが何になるのかっつったら、何にもならないけど。生きてて必要な情報だったら普通に覚えてるから」

 身も蓋もない言い方だが、なんだか千晃らしいような気がした。彼はきっと超現実主義者で、生きるために必要な知識やものは大切にするが、そうでないものはばっさりと切り捨ててしまうような、白黒はっきりした人なのだろう。

(男女の関係も、つきあうか他人かの二択だったりして)
 そう思うと、自分がなぜか千晃の彼女だということにも納得できる。

 心愛からぐいと手を引っ張られて、有紗はよろめいた。子どもというとお昼寝が必要なイメージだが、心暖はまったく疲れも見せない。

「心暖ちゃん、元気だなあ」

「そそ、ふたりだと結構大変。俺は休憩したくても、心暖はいつももっと遊びたいって思ってるから。今日はまだいい方」
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