365日のラブストーリー
 こんなとき親というものの逞しさを感じるが、驚きもする。たくさんの大人と接して、色々な価値観を学ぶことは娘のこれからを考えればとても大事だ。千晃にとって自分自身のことよりも何よりも優先すべきことなのだ。

(わたしはどうなんだろう)
 ふと繋がれた柔らかな手に視線を送ると、心暖が愛らしい笑顔を見せている。

 きっと今日一緒に出かけられることを、とても楽しみにしてくれていたのだろう。それなのに、一緒にいながらつい神長のことを考えてしまって、きちんと向き合うこともできていない自分が人でなしのように思えてきた。

(ちゃんとしなきゃ。せめて、会っている時間だけでも)
 心の中に、そして手のひらに止めていた記憶を放って、有紗は心暖と手をもういちど握り直した。



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