365日のラブストーリー
「ごめんなさい、素敵なお洋服だなって思うんですけれど、ちょっとわたしには似合わなかったみたいで」

 有紗が苦笑いでパンプスを引っかけると、店員はハンガーにつり下がった二つのワンピースを目の前に掲げてきた。

「それではこちらはどうでしょうか」
 ひとつはVネックでデコルテを強調した紺のロングワンピース。ほどよいゆとりと、腰に絞りをいれたタイトなデザインには細見え効果があるらしい、店員が力説している。

(着る人によっては、そうかもしれないけれど)
 ロングワンピースは、小柄女子にはバランスを取るのが難しいアイテムだ。重心が下がって服に着られている印象になってしまうことは、経験上よく分かっている。

 もうひとつはソフトな風合いのウールが上品な、Aラインワンピース。ジャケットを羽織れば仕事着にもなるという着回しの利くアイテムだけれど、この服がもっと似合いそうな知人が簡単に思い浮かんでしまう。

 だからもし買ってしまったら、服に申し訳ない。洋服だって当然、それが似合う人に着てほしくて生まれたのだから。
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