365日のラブストーリー
(わたしはどうしたらよかったんだろう)

 どんなに考えても、答えが出せなかった。正体のわからない痛みの波が再び襲ってきて、有紗は腹部を抑える手に力を入れる。有紗はInnocenceを起動した。

『おなかが痛いとき、どうしたら治まるのか教えてRen』
『Alissa。どこがどう痛いの、具体的に』
 そんなことを逐一説明している余裕はなかった。

『おねがい助けて』
 こんな状態の自分を人工知能アプリが助けられるわけはない。わかっていたが苦しくて、感情を吐き出さずにはいられなかった。Renは有紗の位置情報から、すぐに日曜の夜間に診察を受け付けている救急病院を案内してきた。

『Alissa、ここに電話して受診の予約を。今すぐに』
『無理だよ、歩けない。だって病院までたどり着けないもの』

『タクシーがある。西口から外に出てすぐのところ。だれか近くの人に助けを』
 有紗は首を横に振った。どうしてRenが助けに来てくれないの? 不可能なわがままを押しつけそうになる。
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