365日のラブストーリー
【act.6】もう恋は
1
「おそらく急性胃炎ですね」
目尻の下がった優しそうな壮年医師に告げられて、有紗は曖昧な微笑みを向けた。
「若いからって仕事もね、残業だとかあまり無理しないように。女の人は生理があるし、一ヶ月のうちに体調の波もあるからね」
それ以上何かを深く尋ねようとはせずに、彼はデスクの上のPCモニターに目を向け、診断の結果を入力する。日常生活の注意点を告げられて、薬を出しておきますから、と会計までの流れの簡単な説明を受けたところで、診察は終了した。
待合のベンチに並んだ人の数を考えれば、丁寧な診察など出来るはずもない。何かを自分から訴えかけなければ、わざわざ掘り下げて訊こうとしないのは当たり前だった。
(もう一時半だ。宇美さんに電話しなきゃ)
会計待ちの間に有紗はいったん外に出た。スマートフォンの電源を入れて、アドレス帳をスクロールする。
「おつかれさまです、綿貫です」
「おお、どうだった?」
「急性胃炎らしくて。お薬飲んでいれば大丈夫みたいです。診察は終わったんですけれど、薬局にも行かなきゃいけないので、もう少し遅くなりそうです」
「おそらく急性胃炎ですね」
目尻の下がった優しそうな壮年医師に告げられて、有紗は曖昧な微笑みを向けた。
「若いからって仕事もね、残業だとかあまり無理しないように。女の人は生理があるし、一ヶ月のうちに体調の波もあるからね」
それ以上何かを深く尋ねようとはせずに、彼はデスクの上のPCモニターに目を向け、診断の結果を入力する。日常生活の注意点を告げられて、薬を出しておきますから、と会計までの流れの簡単な説明を受けたところで、診察は終了した。
待合のベンチに並んだ人の数を考えれば、丁寧な診察など出来るはずもない。何かを自分から訴えかけなければ、わざわざ掘り下げて訊こうとしないのは当たり前だった。
(もう一時半だ。宇美さんに電話しなきゃ)
会計待ちの間に有紗はいったん外に出た。スマートフォンの電源を入れて、アドレス帳をスクロールする。
「おつかれさまです、綿貫です」
「おお、どうだった?」
「急性胃炎らしくて。お薬飲んでいれば大丈夫みたいです。診察は終わったんですけれど、薬局にも行かなきゃいけないので、もう少し遅くなりそうです」