365日のラブストーリー
(明日も仕事、行きたくないな)
 顔を合せたときに、どうしたら良いのかわからなかった。

 調剤薬局で薬を受け取って、有紗はまっすぐ帰宅した。朝から何も食べていないはずなのに、不思議と空腹感がない。

 診断の結果を神長と千晃に送るべきだろうか。スマートフォンを手に持ちながらしばらく悩んでいたが、何も行動を起こす気になれないまま、テーブルの上に置いた。

 お湯を沸かしてカップスープの粉を溶く。時間をかけてゆっくりと胃に落としてから、薬を飲んだ。

 けれども、有紗には早く治りたいという気持ちはあまりなかった。病院に行ったのは、会社を休むための口実でしかない。どうせもともと、任されている仕事に専門性があるわけでもない。

雇ってもらえているのも、宇美の下に置いてもらえているのも厚意なのだ。どうしても必要な人間だからじゃない。

(別にわたしがいなくたって)

 思考のすべてが全部マイナスに変わっていって、気持ちが沈んでいく。時間があると、これまで考えもしなかった、余計なことばかりが頭を巡ってしまう。
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