365日のラブストーリー
「……心暖ちゃん、迎えに行かなくて大丈夫なんですか?」
「仕事で少し遅くなる、って連絡入れてある。どうしても、有紗ちゃんに会いたくて」

 怒ってはいないのだろうか。何を考えているのかわからずに顔色を窺った。

(まただ)
 昨晩見せられた苦悩の表情を、再び目の当たりにして、有紗の胸が痛む。

「昨日、神長さんと朝まで話してた。……俺は神長さんが有紗ちゃんのこと好きだとばかり思ってたけど、そうじゃないってわかった。だけど、有紗ちゃんの気持ちはわからない。俺のこと一回も好きって言ってくれたことないよね」

 そこまで言われても『好き』という言葉がどうしても出てこない。有紗は千晃から視線を逸らした。

「ごめん、そうやって俺が追い込むから、有紗ちゃんは……。俺はどうしたらいい?」

 応えることのできない質問ばかりだった。笑顔で受け流すことができる、それだけが唯一の取り柄だったのに、黙り込んで俯くことしかできない。
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