365日のラブストーリー
「でも安心した。有紗ちゃんが、神長さんに興味なさそうだって分かって。容姿とスペックじゃどうひっくり返っても歯が立たないからな」

 有紗は驚きの声が出そうになるのを、飲み込んだ。

 さきほどの宇宙人の話からそうなってしまったのだろうか。むしろそのミステリアスな部分に魅力を感じているというのに、正反対の解釈だ。昨日からずっとこんなかんじだ。話は繋がっているのに、なんだか内容が噛み合わない。

「そういえば、黒糖おかき好きなんだ?」
「え、ええ……たぶん」

「たぶんって何だよ、自分で選んでたのに」
 隣に並んでエレベーターの到着を待つ間、千晃の視線が横顔に刺さっている。手のひらに妙な汗が滲んできた。

 これは今、いろいろな誤解を解いておかないと大変なことになってしまうのではないだろうか。そんな予感に駆られて向き直ったとき、

「ちょっとだけど、話ができてすげー嬉しかった」
 千晃が甘えるように、有紗のひたいのあたりに頬を寄せてきた。
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