365日のラブストーリー
2
有紗が坂巻と話をするために予約したのは、会社から徒歩五分ほどの場所にある個室居酒屋だ。昼間に居酒屋を使うことに気が引けるのか、会社の人間がほぼ寄りつかないことは、宇美からの情報で確認済みだ。
ランチタイムは漁港直送の新鮮な魚を千円以下の定食にして出すこともあって、お得感だけでも満足した気分になる。昼休みになってすぐに店に行くと、受付をしているあいだに坂巻も追いついた。
二名用の狭い個室に案内されて、向かい合わせに座った。
「場所のせいかな、飲みたくなるね」坂巻は顔を綻ばせた。
「一杯くらいなら全然大丈夫な気がしますけど。宇美さんなんて、ランチ中にビール飲んだりしてるみたいですし」
「ほんとうに? いいね」
そうは言ったが、さすがに坂巻はビールの注文をしなかった。ランチの注文を終えるとテーブルに煎茶の入った急須が置かれた。茶碗にそれを注いでから、有紗は切り出した。
「坂巻さん。神長さんってどういう人だと思いますか」
「どういう人、かあ。簡単に言い表すのは難しいけれど」
前置きして、坂巻は苦笑した。
有紗が坂巻と話をするために予約したのは、会社から徒歩五分ほどの場所にある個室居酒屋だ。昼間に居酒屋を使うことに気が引けるのか、会社の人間がほぼ寄りつかないことは、宇美からの情報で確認済みだ。
ランチタイムは漁港直送の新鮮な魚を千円以下の定食にして出すこともあって、お得感だけでも満足した気分になる。昼休みになってすぐに店に行くと、受付をしているあいだに坂巻も追いついた。
二名用の狭い個室に案内されて、向かい合わせに座った。
「場所のせいかな、飲みたくなるね」坂巻は顔を綻ばせた。
「一杯くらいなら全然大丈夫な気がしますけど。宇美さんなんて、ランチ中にビール飲んだりしてるみたいですし」
「ほんとうに? いいね」
そうは言ったが、さすがに坂巻はビールの注文をしなかった。ランチの注文を終えるとテーブルに煎茶の入った急須が置かれた。茶碗にそれを注いでから、有紗は切り出した。
「坂巻さん。神長さんってどういう人だと思いますか」
「どういう人、かあ。簡単に言い表すのは難しいけれど」
前置きして、坂巻は苦笑した。