365日のラブストーリー
 座る場所が椅子からベッドに変わっただけだというのに、なんとなく落ち着かない。有紗は目線の先、窓越しに見えるヨットの帆ばかりを追っていた。

「わたし、神長さんとお話しするようになって、これまで深く考えなかったようなことをたくさん考えるようになったんです。その、恋愛のこととかも。それで気がついたのは、わたしはみんなみたいに、自分だけを愛してほしいとか、自分だけを見ていて欲しいっていうふうにも思わないんだなっていうことで」

「綿貫さんには誰かを独占したいとか、そういう気持ちはないんですか?」
「神長さんに対してはあまりそういう風に感じないのかもしれません。それで、いろいろ考えているうちに、わたし理由がわかったんです」

「興味深いですね。よかったら教えてもらえませんか」

 ちらりと横顔を見ると、神長も有紗と同じように、海のほうを向いている。有紗にとっては、じっと見つめられているよりも並んで座っているときのほうが話をしやすかった。思えば大切な話をするときは、いつも神長は隣にいるような気がする。
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