365日のラブストーリー
「はい。特別な人をたったひとりの人が支えるのってちょっと難しいんじゃないかなって。それに、たとえば他に好きな人がいたとしても、わたしへの愛情がなくなってしまうとか、そんなこともないんじゃないかなって。もともとひとつの身体の中に、何人も人が入っているような状態なので」

「なんだか超人的になってきましたが」
「でも、たぶんそうなんだと思います。だから、神長さんが他の人を求めても、それは必要なことなんだなって普通に思ってしまうというか」

「新しい考え方ですね」
「でも、少し当たっているような気がしませんか?」
 ややあって、神長は観念したように頷いた。

「……そうかもしれません」
「やっぱり!」
 有紗はぽん、と両手のひらを胸の前で合わせた。彼自身のことを少しは理解できているのかと思うと嬉しくて、口元に笑みがこみ上げてくる。

「とはいっても、俺がそれを肯定するのは色々と問題がありますけれど」

「他の人はわかりませんけれど、わたしと神長さんの関係では何も問題ないと思います。そう、だから神長さんにとって大切な人がたくさんいるのが当たり前で、そもそも独占しようという気にはならないというか。わたしはただ、神長さんが誰かに対して優しい気持ちでいるとき、その人への想いを、神長さんと同じように大切に考えることができたら幸せだなって」
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