365日のラブストーリー
 視線を感じて首を横に向けると、神長はどこか唖然としたようすだった。

「あなたはかなり不思議な人ですね」
「神長さんのほうがもっと不思議です」

 脱力したようにベッドに上体を倒し、神長はため息を吐き出した。有紗は振り返って、顔を覗き込む。

「それに今さっき、わたしまた神長さんの優しさに気づいてしまって。知るほどに好きになってしまうんですけれど、わたし、どうしたらいいですか?」

「どうしましょうか」
 腕を引かれて、有紗は神長の胸の中に倒れ込んだ。背中に腕が回されて引き寄せられる。シャツ越しに触れあう身体の温かさに、鼓動が速まる。

 呼吸するたびに、彼の胸はゆるやかに起伏する。大きな手に髪を撫でられて、緊張は安らぎに変わっていく。有紗は瞼を下ろした。

 言葉は何もなくても、触れる手の優しさから愛情が伝わってくる。そのうちに神長の呼吸が規則的になって、手のひらが重くなった。そっと瞼を開けて目線を上に向ける。
 初めて見る無防備な寝顔に、有紗の顔が綻んだ。
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