365日のラブストーリー
 有紗は驚いた。気づけば坂巻がさっきそうしたように、あたりに自社の社員や関係者がいないかを確認している。

「まず結論から言うね。僕は神長くんと一緒に仕事をやるよ。彼がまだ僕のことを受け入れてくれれば、だけど」

「でも……」
 どういうことなのだろう。異動はもう決まっているし、新事業が軌道に乗るまでは三年近くかかると宇美から聞いている。そのあとに、合流するということだろうか。

「新天地ではITインフラ整備だけじゃなくて、経営やマネジメントもやっていくようになるんだけど。そこで得られる経験や知識はきっと、神長くんにとって役に立つものだと思うから。目安は一年後、かな」

「え、一年? 一年後に退社で、もう話が決まってるんですか?」

 有紗は敢えて訊いてみた。経営まで総合的に学べてしまう、若手社員にだけ開かれた出世コースだ。本当なら退社希望の人間を回すはずはない。
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