365日のラブストーリー
「宿泊先、一応教えておきましょうか」

「大丈夫。時差プラス一時間、それを聞いてなんとなくわかりそうだから。そう、あとさ」
 坂巻はここ数ヶ月多忙だった理由を有紗に説明した。

 起業の誘いを受けたときに、膨大なプログラムの入ったUSBメモリを渡されて、ひたすらその解読に勤しんでいたらしい。
 学生の頃から神長が起業のために準備し続けていたもの、考えていたことを深く理解するところがスタート地点だと思ったようだった。

 『神長くんのことが大切だから中途半端なことはしたくない』いつか坂巻は真剣な眼差しでそう言っていたのは、渡されたデータの内容や、おそらく友人以上に膨らんでいる神長の想いを感じたからかもしれない。

「神長くんの頭の中を覗いてみたいと思ってはいたけど……僕にはとても思いつかないような内容だった。神長くんの考えていることが世の中のスタンダードになる日がきたら、きっとすごいことになると思う」

 坂巻は口元に笑みを浮かべている。
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