365日のラブストーリー
 早く二人が会って、思いが通じ合うように。心の底からひとの幸せを願えるのも、それが神長に関することだからかもしれない。

「わたしも覗いてみたいですけれど、たぶん見ても全然わからないんだろうなあ。普段話をしているときだってどのくらい理解できているのか」

「人には多かれ少なかれ、わからない部分があるからね。でも、わからないこと知っていくのが楽しいと思える人にとって、神長くんはすごく魅力的な存在だよね」

 有紗はその言葉に共感するように、深く頷いていた。
 電車が停車して、車両にまた人がなだれ込んでくる。乗客の中に宇美の姿が見えて二人は頭を下げた。

「おはよう、なんで坂巻エンタープライズは地下鉄? 綿貫までルート違うし。あやしいなあ、こんな朝っぱらから」
「違いますっ、ちょっと用事があって、それぞれに」

「はいはい、わかってるって。ああ、そうだ。坂巻くん荷物まとめた? 部屋の手続きとか大丈夫? 今週末やらないといけないことたくさんあるでしょ」
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