365日のラブストーリー
 それに、寂しいとは言いたくはなかった。そうやって甘えてしまったら、ひとりになりたくてここに来た神長に気を遣わせてしまう。

(朝ご飯を食べて、それから会社のみんな分のお土産を今のうちに買っておこう)
 今のうちならじっくりと品物を選べるし、一人旅気分を満喫するのも悪くない。夕方までのプランを考え始めると、気持ちが高揚してきた。

 室内に戻ってスーツケースを開き、ベアトップのマキシワンピースを引っ張り出す。以前両親とハワイに行ったときに買ってもらった、プルメリア柄のリゾートウェアだ。

 首まわりをすっきり出して縦のラインを作るという細見えルールに倣ったような服だが、日本では着る勇気がなくて、しまい込んだままになっていた。肌を出すことはコンプレックスを晒すに等しいが、自分を鼓舞して身に纏う。

(このくらいリゾート感出さないと、神長さんのためにも)
 メイクをして小ぶりのかごバッグにショールを入れる。

 有紗は朝食のためにエッグスンシングスへ向かった。日本でも人気の店で、国内の店舗には何度も行ったことがあったが、海外は初めてだ。
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