365日のラブストーリー
「ダメです、そんなの。ひとのお菓子ばっかりつまみ食いしてないで、ちゃんと食べないと身体壊しちゃいますよ」

「倒れたことないし」
 どこか悪くなってからでは遅いというのに、宇美はまるで気にとめる様子もない。

「じゃあ一緒にランチ行きましょう。この時間ならお店も空いてるし、すぐに食べられるしぜんぜん面倒くさくないですから」

「ええ?」
 仕事は完璧、本社唯一の女性幹部で一目置かれる存在なのだが、仕事とそれ以外のギャップの激しい人だ。

そんなプライベートのルーズさが、厳しくともとっつきやすい宇美の魅力ではあるのだが、食事くらいちゃんと食べてくれないと本当に倒れてしまう。

 有紗は席を立ち、気乗りしていなそうな宇美の腕を引いた。ランチに行くことでもし仕事が終わらなくなるのなら何でも手伝う、と半ば強引に約束を取り付けて、有紗は宇美を外に連れ出した。

 それに、みんなのお菓子を守るためにも、きちんと食べさせなくてはならない。
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