365日のラブストーリー
 会社を出て向かった先は、駅前の商業ビルに入ったトラットリアだ。神奈川県の契約農家から直送されてくる新鮮な野菜を使ったパスタが売りで、サラダとドリンクがセットになったランチは千円と破格だ。

 野菜は鮮度が大切だ。流通経路がショートカットされているだけでも、ほんとうに美味しいのだ。会社の外に出ることすら億劫な宇美でも、この高コスパには満足するはずだ。

「外食するとどうしてもビール飲みたくなるんだよな。モレッティあるな。いいねえ」
「楽しく働くのがモットーでも、ビールはだめです!」

「綿貫も最近うるさくなってきたなあ。誰に似たんだか」
「何言ってるんですか」

 日替わりの三浦産冬野菜と牡蠣のクリームソースを二つ注文して、有紗はため息を落とす。上司である宇美と注文を合わせる、という理由をつけて、またクリームソースのスパゲティを頼んでしまった。

 明日からは外食は必ず和食にしよう。心の中で固い誓いをたてる有紗を、宇美がにやにやと眺めていた。

「で、どうなのよ。綿貫の恋は」
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