365日のラブストーリー
(車の運転だと紅茶よりもコーヒーだよね、きっと)

 父親はいつも、運転中はブラックコーヒーしか飲まない人だった。同じかどうかはわからないが、それしか目安にできる人もいない。

それに、身の回りにいるすらりと背の高い人は糖分の入った飲み物をまったくといっていいほど飲まないから、たぶん間違っていないはずだ。

 有紗は重くなった買い物かごをレジカウンターの上に置いた。レジ打ちを待つ間、もう一度駐車場に車があることを確認する。

(急がなきゃ)
有紗はショルダーバッグに手を入れて、はっとした。

(あ、お財布……)
 背中にどっと汗が噴き出す。そういえば、デスクの引き出しに入れたきり、鞄に移した記憶がない。銀行のカードもクレジットカードも、IC定期券も全部財布の中だ。

「2268円です」
 見慣れた顔の男性店員が会計を待ち構えている。
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