365日のラブストーリー
「えっと……、申し訳ないんですけれど」
 有紗が言いかけたとき、カウンターの上にミネラルウォーターが乗った。

「これも一緒にお願いできますか」
 神長だ。有紗の分まで速やかに支払いをし、そのまま袋を手に取った。店を出ると、ミネラルウォーターを一本取り出して、有紗に袋を渡してきた。

「すみません、デスクの引き出しに財布を置いてきてしまって。ほんとうにごめんなさい」
 いつも人に迷惑ばかりをかけてしまう自分が、あまりにも情けなくて、目に涙がにじんでくる。風邪を引いているからなんて言い訳にもならない。

「保険証も会社ですか?」
「いえ、保険証は家にあります」

「じゃあ病院にはいけますね。……とりあえず」言いながら神長は、ジャケットの内側から財布を取り出した。

「病院代と、会社までの交通費と」
 神長は一万円札を二枚、有紗の手元に差し出してきた。
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