365日のラブストーリー
 受け取るわけにはいかない。けれど、ここで借りなかったらさらにまた誰かの手を煩わせることになる。

「……お借りします、ほんとうにすみません。明日かならずお返ししますから」
「それはまあ、いつでも。もし何かあれば連絡ください。仕事中でも比較的動ける立場なので」

 前に一度渡したかもしれませんが、と神長は名刺も一緒に渡してきた。有紗は丁寧に受け取って、バッグの中にしまった。

「あ、そうだ神長さん」
 買い物したばかりのビニール袋の口を開いて、神長のほうに向ける。

「もしかしたら、わたしのせいでお昼ご飯を食べる時間がなくなってしまったんじゃないかと思って、買ってみたんですけれど。何でも好きなの持って行ってください」

「いいんですか?」
「……結局買ってもらっちゃって、何のお礼にもなってないですけど。そのコーヒーは神長さんのです」
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