残念ガールは本命チョコを渡さない


「あ、あれ篠宮じゃん?」


───!?


舞花の声に勢いよく顔を上げれば、人もまばらな生徒玄関にポツンとしゃがみ込む仁の姿を見つけて


ドキドキと私の心臓は狂ったように踊り出す。


「なんだ、案外いい感じ?」

「え?」

「篠宮が待ってんの、杏菜なんじゃない?」


……うっそだぁ。
優里、それは絶対違うと思うよ。

多分あれだよ、また呼び出されて相手を待ってるとか。それか今日もらったチョコが大量すぎてどうやって持って帰るか考えてるとか……。


って、


「嘘……」

「遅せぇんだよ」


私たちに気づいた仁がゆっくり立ち上がったかと思えば、バチッと視線がぶつかった。


も、もしかして……


本当に私のこと待っててくれた、の!?


「じゃ、私たち先に帰るから」

「明日報告待ってるね〜ん」

「え、ちょ!!待って、置いてかないで!!」


すがるように見つめる私の事なんか、ちっとも気にしていないらしい2人は、私を残して早足に下駄箱へ向かってしまう。


遠くなる2人と、近づく仁。
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