残念ガールは本命チョコを渡さない
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「優里は今年、誰かにあげるの?」
「ん〜、吉岡先輩にあげようかなって」
「え!!優里って吉岡先輩のこと好きだったの?」
「ち、違う!部活でお世話になってるから……!そのお礼に!」
「へぇ〜!で?いつから好きなの?」
「だ、だから違うってば!!」
隣でキャッキャウフフしているイツメン2人を、他人事のように見つめながら、私は今さらほんの少し後悔している。
学校中、どこもかしこもバレンタイン一色。
なんなら、バレンタインの飾りがあちこちに飾ってあるような幻覚すら見えてくる。
浮き足立つ男子と、ドキドキボンバーな女子の熱に、チョコじゃなくて私が溶けそうだ。
「で?杏菜は篠宮にもう渡したの?」
「え?」
突然話を振られて、咄嗟に変な声が出てしまった。
「チョコよ、チョーコ!あげるんでしょ?」
「あぁ、チョコね。……あげないことにした」
「は?あの杏菜が?篠宮にチョコあげない?」
「うん、あげない」
"何が起きたか分からない"そんな顔で固まった優里と、舞花にコクコク頷けば
「どうした?変なものでも食った?」
途端に、私の体をベタベタ触りながら体調を気遣い始めた2人。