残念ガールは本命チョコを渡さない
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「杏菜……、あんた顔酷いよ?」
「素直に言えば良かったじゃん、チョコ用意してないって」
放課後。
やっと終わった一日に、悲しいやら嬉しいやら。
方針状態のまま、みんなが帰った教室で優里と舞花の言葉を右から左に受け流している。
あれからも仁は、本命と思わしきチョコやら、義理チョコやらを絶えずもらっていて、
終始、友達に冷やかされる声が聞こえていた。
「もう、仁なんて嫌いだもぉ〜ん」
今日、仁は私に1度も話しかけてくれなかった。
って、それは今日に限ったことじゃないか。
今日は私から仁に話しかけることがなかった……、これが正解。
私が話しかけないと本当に、話すことすらないのかと思うと正直堪えるなぁ。
「もうやめときな?言っちゃ悪いけど全然脈ないじゃん?」
「そうそう!他校と合コンセッティングしたげるよ?」
"ほら、他校なら恋する杏菜の猪突猛進具合も知らないしさ!"とか言いながら笑う舞花に
どういう意味?と頬を膨らませて見せれば、とぼけた顔で視線を逸らされる始末。