残念ガールは本命チョコを渡さない
「とりあえず、帰ろ?」
「そうそう、落ち込んでてもバレンタインデーはもう終わっちゃうわけだし!」
こんなに後悔するくらいなら、【チョコを用意した上でギリギリまで渡すのを我慢する作戦】にしとけば良かった。
なんて思いながら、2人の言葉に渋々頷いた私は歩き出す。
優里はいいよなぁ。
黙ってたって可愛いし、愛嬌もあるから男子から人気で……。
今日も先輩にちゃんとチョコ渡せたみたいだし。
「ちょっと、溜息!何回目?」
「私、優里になりたい」
「私になったって、篠宮は振り向かないよ」
「そうかなぁ、優里なら仁もコロッと好きになっちゃいそうな気がしてやまないよ?」
「そんな気はさっさとやませろ」
「無理だよ!雨に早くやめ〜!って言ったって、やまないでしょ?それと同じだもん」
「……屁理屈言うと置いてくよ?」
階段を駆け下りて、見えてきた生徒玄関。
優里の冷たい流し目に、ただでさえ今は心がものすごく寒いのに、背筋までゾワッとした。