セツに思う、君のことを。
「あーあ。これじゃ、雪だるま作れないね」
公園の湿った土を指差して彼女は苦笑する。
降り積もった雪が溶けてしまわないように、少しでも早く公園に来たつもりだった。
でも、遅かった。雪は陽が昇る前に、すでに姿を消していた。冬の気配を此処に残して。
それでも、彼女は何一つ不満を漏らすことはしなかった。
笑顔だった。
何時だって、彼女はそうだった。
本当は僕に気を使っているだけなのかもしれないのに。
もう、いいよ。って言えたら良かった。
たったの一言。そう、口に出来たら良かった。
ごめんね。って君に言いたかった。
雪だるま、作れなかったね。って。
雪はまた降り積もってくれるだろうか。
出来るなら──もし、願いが叶うのなら。
君の為に、もう一度だけ雪が舞い落ちてくれますようにと願う。