セツに思う、君のことを。
 冷たい雪が徐々に体温を奪っていく。顔に触れては、涙のように溶けて消える。

 手に握られていたショップバッグは雪に濡れて、綺麗だったその形を歪ませていた。まるで、自分の心を表しているかのようで、嫌だった。

 瞳に忌々《いまいま》しく映るイルミネーションを横目に、溢れた男女の人混みを掻き分けて、その場を離れる。

 もう、要らない。もう、何も見たくない。

 そう思えば思うほどに、自分が酷く惨めで、速度を上げて街中を駆けて行く。

 そして、交差点に差し掛かった時だった。

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