キミと見た最後の線香花火。
 夏の終わりを告げる、季節外れな雨が僕の傘を伝ってアスファルトに滲んでいく。

 今日は天気が悪いな、なんて心の中で独りごちる。

 結局、あの線香花火を散らした日を境に、僕は君と逢えなくなってしまった。

 理由は解らなかった。

 駄目だと思いながらも、君のアルバイト先を訪ねてみても、そこには、もう君は居なくて。

 最後に一方通行に届いたメールの『ごめん』の意味も、君が線香花火が好きな理由も、何一つ聞けなかった。

 唇を重ねたのは、君の気紛れで。

 両想いなのかもしれないと思っていたのも、全ては自分の自惚れだった。

 全部、夢だったんだ。


 傘に穴が開いたのかもしれないな。

 なんて笑って誤魔化す。それでも頬には冷たい感触が止めどなく伝わり、視界を揺らし続けた。

 だから。

 もう一度だけ、君に逢えるなら。
 今度は迷わずに君に思いを伝えよう。

 『君が好きです』と。

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