ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
近くて遠い『幼なじみ』
「それで、次の全校朝礼のスケジュールに変更点が出たんだけど、お前にも連絡届いてるか? 甲斐(かい)」


「はい、会長」


雄太の落ち着いた声が廊下に響いた。


生徒会長と向かい合う雄太の横顔を、窓ガラスから射し込む五月下旬の明るい日差しが照らしている。


あたしはふたりの会話の邪魔にならないよう、教室の後ろ側のドア脇に立って、生真面目そうなその表情を黙って見ていた。


小さい頃は、あたしとほとんど変わらないくらいの背丈だったのに。


雄太ってば中学生になったとたんにグングン背が伸びて、手足のスラリと長い細身のモデル体型になっちゃった。


高校二年生になった今では、あたしとはもう頭ひとつ分くらいの差がついてる。


まだ伸びてるみたいだし、これからもっと差が広がるんだろうなあ。


ほんと、男子の成長ってすごい。


「時間が空いてしまった分は、英語スピーチコンテストで地区優勝した生徒に生スピーチを依頼しています。原稿もチェックしました」


「全校合唱のピアノ伴奏者はどうする? いつも伴奏している生徒は指を怪我しているんだろ?」


「もう代奏者を見つけて依頼済みです」


「助かる! お前はいつも仕事がスムーズで頼りになるよ、甲斐副会長」
< 10 / 223 >

この作品をシェア

pagetop