ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
問答無用で連れ出され、あたしはジタバタと走り出した。


うわわ、ちょっと待ってよ雄太。アンタあたしより十倍は足が速いんだからー!


「瑞樹、頑張ってー!」


「行け行け甲斐! もっと速く走れ橋元!」


すっかり周りから注目を浴びちゃって、熱くなった頬が風とすれ違う。


は、恥ずかしい! しかも、手! 雄太の手が、あたしの手をしっかり握っているんだもの!


手を繋いだのなんて久しぶりだよ。記憶の中の雄太の手とは比べ物にならないほど大きくて、硬い感触。


『男の子の手だ』って意識したら、ドキドキしてますます顔が熱くなった。


「瑞樹、大丈夫か?」


声援を浴びて走りながら、あたしを気遣ってチラリと視線を流してくる雄太の目つきに、また胸が甘く疼く。


な、なんかちょっと色っぽいんですけど。


……って、みんなに見られてる最中に、なに変なこと考えてんの、あたしはー!


急激に恥ずかしさマックスになっちゃって、頭のてっぺんまでカーッとなって、足元を気にするふりして慌てて下を向きながら走った。


うう、あたし今絶対に茹でダコみたいになってる。顔上げらんないよぉ。


雄太に掴まれてる手が異常に熱い。腕の付け根まで緊張してるのに、こうして手を繋いでいることがすごくうれしいんだ。


ずっとずーっと、雄太とこうしていたい……。


でもそんな、照れくささと幸福感の入り混じった時間は、あっという間に終了。


雄太の俊足に助けられて、無事に一位でゴールしたあたしは、騒がしい胸を押さえながら息を整えた。


く、苦しい! 急に走ったせいなのか、雄太のカッコよさのせいなのかわかんないけど!
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