ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
マイクを持った運営委員がこっちに向かって来るのを見ながら、あたしは雄太に握られている手を放そうとした。


ちょっと名残惜しいな。……ん?


手を引っ張ったのに、なぜか雄太が放してくれない。


それどころか逆にギュッと力を強められてドキッとした。


「あの、雄太?」


手、放してくれる?


目で問いかけながらオズオズと雄太を見上げると、雄太はもう片方の手に持っている用紙を、黙ってあたしに見せた。


書かれていた文字を読んだあたしの胸が、バクンと大きく弾ける。


『想い人』


真っ白な四角い紙の真ん中に、黒いボールペンで書かれたその文字が、両目を通して心に飛び込んできた。


反射的に顔を上げたら、雄太が真剣な顔をしてあたしを見つめている。


「俺、絶対に瑞樹を諦めないから」


「……!」


一瞬で全身の血が沸騰して、心拍数が跳ね上がった。


雄太の視線の強さに射抜かれたみたいに、体がピクリとも動かない。


雄太の言葉と、あたしの手を包む温もりが、あたしの中で急速に膨れ上がっていく。
< 106 / 223 >

この作品をシェア

pagetop