ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
ノドの奥から振り絞った小さな声は、涙にかすれて途中で消えた。


心の中で、苦しい思いと悲しい願いがパンパンになるほど膨らんで、行き場を失って破裂しそう。


ヒザを抱えたまま、どうしようもなくグスグス泣いてるあたしの背中を、優しい手がトントン叩く。


なにも言わない海莉の手のリズムが、なによりも慰めになった。


言葉よりもずっと温かい気持ちが、背中を通して伝わって、少しずつあたしの心に染み渡る。


鼓動と同調するリズムが、あたしの中に語りかけてくるんだ。


『大丈夫だよ。あたしは、ずっとそばにいるよ』って……。


ありがとう、海莉。


ありがとう。ありがとう。ありがとう……。


「心配かけてごめんね、海莉」


しばらく泣いた後、手の甲でゴシゴシ顔を拭って、ようやくあたしは顔を上げた。


両目と鼻の周りが熱くてジンジンするけど、どうにか笑顔になれたのは、海莉のおかげ。


涙が収まったら、いつまでもこうしていられない。


「またグチに付き合わせちゃったね。もう校庭に戻ろう」


「大丈夫? もう少しここにいようか?」


「ううん。リレーに間に合わなかったら大変だもん。海莉はうちのクラスの重要な戦力なんだから」


「まあね。自慢じゃないけどお荷物の先生を引きずって、一位取れるだけのパワーは持ってる」


「それ、立派に自慢」


あたしたちは顔を見合わせ、クスッと笑った。
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