ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
そしてふたりで立ち上がり、体育館裏から校庭へと戻っていく。


校庭では応援の叫び声や実況の音声が重なり合って、相変わらず盛り上がっていた。


「ちょうど借り物競争が終わるところみたいだね。……あれ?」


「どうしたの?」


「あそこにいるの、甲斐くんじゃない?」


海莉が指さす方を見ると、たしかにゴール走者の待機場所に雄太が立っている。


さっきはあたしのせいで失格になっちゃったわけだから、つまり今度は、雄太が誰かに借り出されたってことなんだろう。


ええと、雄太を借りた走者は……?


――ズキン。


胸の奥で不穏な音が響いた。


雄太のすぐ隣に立っていたのが、見知らぬ女子生徒だったからだ。


……べ、べつに、隣に女の子が立ってるくらいで、特にどうというわけじゃないけど……。


「あの子、誰かな?」


でもできるだけ、気にしていない風に聞こえるように意識したりして。


丸みのあるショートボブの髪のサイドを耳掛けにして、頬のラインをすっきり出している女の子の顔を見た。


「外靴のラインの色が赤だから一年生だね。なんか見覚えある気がするから、うちらの中学の後輩かも」


ついこの間まで中学生だったわりに、しっかりと落ち着いた表情が大人っぽい。


特に派手な目鼻立ちじゃないけど、きれいだなって印象で、余計に胸がザワザワする。
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