ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
きれいな女の子が雄太の隣に立つのは……うれしく思えない。


「それでは用紙を読み上げまーす。……ん?」


マイクを持った委員が、用紙を見ながら目をパチパチさせて、様子を窺うように女の子を見た。


女の子がコクンとうなずくのを確認して、すぐさま興奮した声を張り上げる。


「『想い人』!」


雄太の両目が見開かれて、パッと女の子の方を向く。


校庭中が一瞬シーンと沈黙した。


そして次の瞬間……すごい歓声がドォッと校庭中に轟いた。


「ヒューッ! すげえ!」


「甲斐くん、可愛い子に告白されちゃってるー!」


「なんで甲斐だけモテんだよ、ちくしょー!」


四方八方から無数の叫び声が飛び交って、どんどん熱気が高まっていく。


慌てた教頭先生がテントから出てきて、「こら! ご近所迷惑になるから騒ぐな!」って怒鳴るほどだ。


そんな全校生徒が浮かれている中で、あたしはまるで、冷たい水に頭のてっぺんまで浸かっているような気分だった。


あの子……。雄太のことが好きなんだ……。


急激に体温が下がっていくのに、胸の奥の一点だけがジリジリ灼けるみたいに熱い。
< 113 / 223 >

この作品をシェア

pagetop