ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
気持ちの悪い温度差を感じながら、騒ぎの中心にいる雄太を瞬きもせずに見ていた。


雄太は、笑っている。


眉を下げて、唇の両端を上げて、ちょっとだけ困ったように首を傾げて、その場を取りなすように笑ってた。


わかってる。場の空気を読んでるんだって。


それくらい顔を見ればすぐわかる。


でも……。


でも、お願い雄太。


笑わないで。


自分のことを真っ直ぐ見上げる女の子を見返しながら、笑顔なんか見せないで。


「それでは本当に彼女の想い人が甲斐くんなのかどうか、ここでちゃんと宣言してもらいましょう! じゃないと競技失格になりますからね!」


ノリノリの委員がマイクを女の子に向けて告白を促して、あたしの胸のジリジリ感がいっそうひどくなる。


嫌だ。こんなの見たくない。


なのに、視線が釘付けになっちゃってぜんぜん動かせない。


たぶんあたし今、まるで残酷な映画のシーンでも見てるような、悲惨な表情をしていると思う。


グッと息を止めて見守るあたしの耳に、マイクを通した柔らかい声が広がった。
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