ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「一年一組の田中桃花(たなか ももか)です。先輩とは同じ中学で、その頃から甲斐先輩のことがずっと好きでした」


すごい力で胸を殴りつけられたような痛みを感じて、とっさに歯を食いしばった。


決定的な言葉が、ナイフのように心臓の奥深くに突き刺さっている。


雄太のことを好きな子が、雄太に告白した。


あたしの目の前で。


その事実に、あたしはまるで地球最後の日を迎えたみたいな、強烈な衝撃を感じている。


ただ、ただ、ただひたすら……全身が苦しい。


「さあ甲斐! 返事はどうした?」


「一年生に恥かかすなよ!?」


「そうだそうだ! 可愛い子だしオーケーしちまえ!」


あちこちから無責任に囃し立てる声に、隣の海莉がキレて「やかましいわ!」って毒づいた。


どこからともなく手拍子が鳴って、『オーケー』コールが湧き上がる。


完全に出来上がってしまった周囲の様子をチラリと眺めてから、雄太が女の子と向き直った。
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