ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
息をのむほどきれいな色を眺めていたら、眩しくもないのに涙が浮かんできた。


あたしは急いでポケットからスマホを取り出して、イヤホンを耳につけて、一番切ない曲を選んで再生する。


泣いているのは、この曲を聴いているせい。


そんな風に自分を装いたかった。


涙に濡れた両目に映る景色は、いつもと変わりない街並み。


夕日を反射するビルの窓と、濃いオレンジ色に染まる空気と、どこかへ帰る人の群れ。


そして目の前でランドセルを背負った子どもたちが、笑顔で手を振り合って別れていく。


『バイバイ。また明日』


そんな穏やかな声が聞こえた気がした。


あの声は……あたしと雄太の声?


いつもこの場所で、そう約束して別れた。


あの約束は、この空みたいにどこまでも続いていると信じていたのに。


もう、あたしとは約束してくれないの?


もうあの日みたいに、横断歩道の向こうから、あたしに手を振ってはくれないの?


ねえ、雄太。


―― ~♬


イヤホンから聴こえる、まるで泣いているような女性シンガーの歌声。


届かないまま終わる恋を悲しむ歌詞が、今のあたしにはあまりにも切なすぎる。
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