ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「先輩は立派です。成績だっていつもトップクラスじゃないですか」


先輩の天然発言に動揺した様子もなく答える海莉に、先輩も淡々とした声で謙遜する。


「だって俺、そんな頭良くないから。人の倍勉強してるんだから成績いいのは当たり前だよ」


「そういう努力家で、偉ぶったところがひとつもないのも素敵です」


「いや、キミの友だちの甲斐みたいなヤツの方がよっぽどカッコイイよ? あいつはマジですごいヤツなんだよ」


「そうやって、自分以外の人間を心から認めて褒めるところも好きなんです」


海莉の素直な声が、その性格のままに先輩への気持ちを告げる。


聞いているこっちの胸がほんわりと温かくなるような、優しい思いが込められている言葉だった。


「だからどうかお願いです。あたしと付き合ってください」


それからしばらく、沈黙が流れた。


ふたりの顔が見れないから、音が聞こえなくなるとお手上げだ。


どんな状況なのかぜんぜんわかんない。この静けさが不安だよ。


お願い先輩。黙ってないで海莉になんとか言ってあげてよ。
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