ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
『いくらなんでも、約束の時間の三十分以上も前に到着してるのは早すぎない?』


『だって絶対に遅刻したくないもん。できることなら昨日の夜から、ずっとここでスタンバッていたかったくらいだよ』


『グッズ発売日に並ぶオタクかキミは』


『ああ、緊張するー! ねえ、なに話せばいいと思う? 変なこと言って幻滅されたくないし!』


『映画観るんだから、その感想を言えばいいでしょ?』


『無理! だって先輩の隣に座るんだよ!? 映画の内容なんて頭に入るわけないじゃん!』


『じゃあなんで映画にしたのよ?』


もう、あまりにも恋する乙女っぷりが可愛くて笑ってしまう。


やっぱりいいなあ。恋するって幸せなことなんだなあって、しみじみ思うよ。


『緊張するよー。不安だよー。心細いよー。瑞樹にそばにいてほしいよー』


『ごめんね。一緒に行けなくて』


実は海莉から、ダブルデートの提案をされていたんだ。


雄太とあたしも一緒に映画を観に行こうって。
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