ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
たぶん海莉は、あたしたちの関係が好転するきっかけになればと誘ってくれたんだと思うけど、それはお断りした。


せっかくの初デートは、ふたりきりの時間を大事にしてほしいし。


それに雄太を誘うには……あたしの心の中にピン留めされた、あのシーンが邪魔をする。


田中さんと手を握っていた雄太の姿が。


普通に考えて、いくら友だちとはいえ、男の子がなんの意味もなく女の子の手を握るってことはないと思う。


異性と手を繋ぐのは特別な行為。


つまり雄太にとって田中さんは、そういう存在だってことだ。


今でもあたしが雄太のことを好きな気持ちに変わりはない。


でも雄太にこの気持ちを伝えていいのか悪いのか、はっきりとはわからない。


だって雄太の立場からすれば、あたしに真剣に告白して二度も断られて、しかも公衆の面前で恥までかかされたんだよ?


新しい恋に踏み出した矢先に、あたしから『本当は好きです』なんて逆告白されても、どうする?


海莉に相談したら、『どうするかは甲斐くんが決めることだから、そこは瑞樹が考えることじゃない』って言われたけど。
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