ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
ラ、ラ、ラブラブって……!


「違うし!」


「いや、違わないだろ。チビの頃からお前と俺は超仲良しじゃん。なんたって大切な幼なじみだからな」


サラリとそんなことを言って、雄太はまた楽しそうに笑った。


その屈託のない笑顔とセリフに、たった今までカッカと火照っていた顔からスッと熱が引いて、胸の奥がズキンと痛む。


『ラブラブ』なんて言って、やっぱりふざけてただけじゃん。


雄太はあたしのこと、ただの幼なじみとしてしか見てないんだよね。


でもあたしは違うの。


好きなの。雄太に恋してるの。


あたしの気持ち、なーんにも知らないくせに。こんな風に抱き寄せて、そんなこと言うな。


ただでさえ切なくて苦しいのに、余計に苦しくなるじゃん。


ぜんぶ雄太のせいだよ。雄太の……バカ。


――キーン、コーン……


ちょうどそのときチャイムが鳴った。


「お、予鈴だ。じゃあな瑞樹。高木」


「はいはい。またねー」


陽気にヒラヒラ手を振る海莉と一緒に、黙って雄太の背中を見送る。


背が高くて姿勢のいい後ろ姿が隣の教室に入っていくのを見届けてから、あたしは深い息を吐いた。


「ちょっと瑞樹。またそんな悩ましいため息ついちゃって、なに考えてんの?」


ヒョイと身を屈めて顔を覗き込んでくる海莉に、あたしは弱々しく微笑みながら答えた。


「幼なじみっていう、近くて遠い、微妙な関係性について考えてる」
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