ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
普段の態度を見れば、すぐわかる。


たしか同じようなことを海莉も言ってた。雄太の態度からは、あたしへの好意がダダ漏れだって。


雄太のことをずっと見ていた田中さんも、それに気がついていたんだ。


だからこそ雄太の同情を引くように仕向けた。


雄太は、親の離婚問題であたしがどれほど傷つき、苦しんでいるかをよく知っている。


あたしと同じ境遇の田中さんに泣きながら哀願されて、冷たく突き放す気には、どうしてもなれなかったんだろう。


雄太の優しい性格や、あたしへの好意まで計算して、彼女ゴッコを無理に頼み込んだ。彼女はそう言ってるんだ。


「最低ですよね。でも思っちゃったんです。あたしがなにをしたって、どうせ甲斐先輩が橋元先輩を好きな事実は変わらないんだし、ほんのちょっとくらいゴッコの時間をくれてもいいでしょ?って」


田中さんの細い指が、ストローが入っていた包装紙をクルクルといじる。


その動きをじっと見つめる彼女の表情は、なんだか泣き笑いしているようだった。


「あたしはもう二度と甲斐先輩とは会えなくなるんだから、それくらいのワガママは許されるよね?って。……すごく勝手な言い分ですよね。橋元先輩のこと利用して傷つけて、本当にごめんなさい」
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