ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
決して壊れない宝物
今朝のあたしの目覚めは、今日の空模様とまったく同じ。


灰色のどんよりした雲が、見渡す限り空を覆って、今にもポツポツと水滴が落ちてきそうだ。


「はあっ」


深くて重いため息をつきながら、あたしは机にヒジをついて両手で顔を覆った。


今日これからお父さんが家に来て、お母さんと離婚届にハンコを押す。


……本当に急だよ。急すぎる。


田中さんと話せたおかげで、せっかく雄太の件に関して心が軽くなっていたのに。


不意打ちで特大の岩石が頭の上に降ってきた気分だ。


お母さんからすれば、『家に居たくないなら、一日どこかに外出していていいから』って、予防線を張ってくれたつもりなんだと思う。


でもなにも、わざわざ晩ご飯食べてるときに言わなくても。


おかげでそれからご飯がぜんぜんノドを通らなくて大変だった。


今もこうして、まるで死刑執行を待ってるような気分で、着々と過ぎる時間ばかりを気にしている。


つらいことを、ただ待ち続けて受け入れるしかないって残酷だ。


これならいっそ、教えてもらわない方がよかった。


でも教えてくれなかったら、またあたしだけ部外者扱いしたって怒っていたかもしれない。


どちらにしろ、つらいことだけはたしかだ。
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