ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「そこがズレちゃってると、ヘタに他の女の子たちより大事に思われている分、余計に空しくて悲しい」


「瑞樹はもっと自信持っていいと思うけど。恋と人生には積極性も大事だよ?」


「片想いの相手が自分のことを想ってくれている自信なんて、ないよ。だから片想いしてるんじゃん」


「あーもー、じれったい! まるで最初から犯人わかってるミステリードラマで、犯人探しに迷走してる探偵役を見てるみたい!」


海莉が両手足をジタバタさせながら叫んだ。


「そっちじゃないだろ!って背中ドツキたくなっちゃう。結末はわかってるんだから、さっさと甲斐くん捕まえて安心させてよ」


「捕まえて安心とか、逃走犯の確保じゃあるまいし」


笑いながらこんな話をしている間に、予鈴で教室に集まってきたクラスメイトたちが次々と席に着いていく。


窓際の列の篠原さんは、斜め向かいの阿部くんとカップル。


すぐそこの席に座って友だちとおしゃべりしているあの子は、先月から部活の先輩と付き合い始めたらしい。


みんなすごいよ。信じられない。


だってカップルが成立したってことは、好きな人に『あなたが好きです』って告白したってことでしょ?


告白だよ? 好きな人に、こくはく!!


そのシーンを自分に置き換えて想像するだけで、顔から血の気が引いて失神しそう。


恐怖で心臓がバクバクして息が苦しくなる。


あたしにはムリ! 絶対にムリ!


同じ恐怖体験でも、『告白か、スカイダイビングがどっちか選べ』って言われたら、迷わずパラシュートに飛びつくくらいの自信はある。


みんな、なんでそんな勇気があるの?


「OKしてもらえる保証なんてどこにもないのに、なんでそんな危険な道を選べるのかな?」
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